可変電圧リニアレギュレータのDAコンバータ制御②
作成者:mou-mou
可変電圧リニアレギュレータのDAコンバータ制御①でご紹介させて頂いた回路の解説および抵抗値の計算式の導き出し方について掲載いたします。
前回記事では、LT3020を使用したシミュレーション結果を記載しておりましたが、今回はリニアレギュレータの原理を理解しやすくする為、オペアンプ+トランジスタの回路構成で考えていきます。
R2を30KΩから480kΩまでスイープさせてシミュレーション結果です。
R2とVoutの関係は以下の式となります。
【数式1】
これは、一般的な可変電圧レギュレータに共通する計算式でLT3020のデータシートにも同等の計算式が記載されております。
この回路の出力部分のみを等価回路にすると以下のように考えることができます。
R2とVoutの関係を、先ほどの式を当てはめてシミュレーションするとVadjが200mVとなります。
では、DAコンバータで電圧を制御する場合を考えていきます。
前回と同じくDAコンバータで制御する電圧ソースをVdacとした場合の回路図です。
この回路の先ほどと同じ要領で出力部分のみを等価回路にします。
Vadjを最小値(すなわち0V)にしたときに、Voutは最大値になる、Vadjを最大値にしたときに、Voutは最小値(すなわち0V)になる回路を考えていきます。
最大値をVmaxとして、VoutとVadjの関係が直線的であると考えるならば、
【数式2】
と考えることができます。また、この関係から、等価回路としては、左右対称である必要があるのでR2とR3は等しくなければならないことがわかります。
この回路を少し並べ替えると、キルヒホッフの法則の法則でおなじみの回路となります。
それぞれの電流は以下の式の通りとなります。
【数式3】
キルヒホッフの法則により、それぞれの電流の関係は以下の式となります。
【数式4】
【数式4】に【数式3】を代入すると
【数式5】
となります。
R2とR3は等しいと考えると、
【数式6】
となり、この式に【数式2】を代入すると
【数式7】
となります。
VadjとR2を移項すると
【数式8】
となり、さらにこの式を展開すると
【数式9】
となります。
R1を移項すると、R2を求める式となります。
【数式10】
R2とR3は等しいので、前回ご紹介した式である
【数式11】
となります。
Vmax : 5V、Vadj : 200mV、R1 : 20kΩの場合、R2とR3は460kΩとなります。
先ほどの回路にこの値を当てはめてシミュレーションしてみます。
意図通りのシミュレーション結果を得ることが出来ました。
今回は、R1が固定で20kΩとした場合のR2およびR3の抵抗値を導き出しました。
しかし、Pericallisユニバーサルテスタで使用しているテキサス・インスツルメンツ社製TPS73101はR1||R2が19kΩである時が最良の精度とデータシートに記載されております。このように、Adj端子(FB端子)に接続される抵抗の総和が推奨値として提示されているレギュレータも多く見かけます。よって、次回はAdj端子(FB端子)の抵抗値の総和からR1,R2,R3の値を求める方法をご紹介いたします。